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「新・ヘリポートの造り方」

基礎知識

2024.08.28

「新・ヘリポートの造り方」計画段階からの注意点 : 屋上ヘリポートの場合 その1


屋上ヘリポートには一般的なチェック項目に加えて、さらに多くのチェック項目があります。設計会社任せにするのではなく、特に病院の建設担当者はヘリポートについて十分に理解し、事前に検討しておく必要があります。大手の設計会社にもヘリポートに詳しい人などほとんどいません。チェック項目がたくさんある屋上ヘリポートは、注意しなければ「残念なヘリポート」「危険なヘリポート」「降りられないヘリポート」になりかねません。私はそういったヘリポートをたくさん見てきました。「残念なヘリポート」を造らないためにも以下の10項目をチェックして下さい。

 

チェック1【ビル風】

屋上ヘリポートにとってビル風は難敵です。十分に理解してヘリポート設計に役立ててください。特に建物の屋上に直接着陸する、いわゆる「屋上直降り」は危険と覚えておいてください。
ヘリコプターは基本的に風に正対して離着陸します。向かい風の状態で着陸するということです。屋上ヘリポートへの着陸で特に注意が必要なのがビル風によるダウンバーストです。

 

ビルの形状にもよりますが、風上からビル側面に当たった風の約1/3は屋上方向に吹き上げるとも言われています。当然屋上付近では風速が増します。一方、ビルの風下側は気圧が低くなるため、ビル上空を通過したビル風は風下側で下方に向かうことが知られています。

 

屋上ヘリポートへアプローチしたヘリコプターがビル近くでダウンバーストに巻き込まれる危険があります。さらにダウンバーストの手前では乱気流によって発生した上昇気流により機体が持ち上げられることがあります。一瞬、機体が浮く感じがするのでパイロットが降下させようとします。降下させようとした瞬間にダウンバーストに巻き込まれる心配があるのです。

 

ビル風の他にも、屋上には換気口や排気口があることも多く、屋上付近は風向風速が安定しにくいのです。
そのためICAOでも「屋上直降り」はなるべく避けるようにと指導しています。

 

ビルの大きさや形状にもよりますが、ビル屋上では着陸帯を3m程度は屋上面から嵩上げするべきでしょう。着陸帯の下に十分な風道を作ることによって乱気流やダウンバーストの影響から逃れることができます。

 

ビル屋上の風は、山の尾根付近の風に似ています。ヘリコプターは尾根越え時には十分なクリアランスを取らないと突然来るダウンバーストに巻き込まれて墜落することがあります。

 

油断は禁物です。「屋上直降り」ではなく、着陸帯は乱れた風を少しでもクリアできる高さに設置するべきなのです。

 

「新・ヘリポートの造り方」

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