コラム
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基礎知識
2024.03.25
病院ヘリポートマークを描けないワケ
「運輸省」「建設省」の不勉強
ICAOは航空運送に関する国際標準、勧告、ガイドラインの作成などを行う機関です。そのICAOが、病院ヘリポートには「そこが病院であることが分るように病院ヘリポートマークを標示しましょう」と指導しています。私の知る限り、世界中の先進国の病院ヘリポートはどこも「白十字に赤H」の病院ヘリポートマークを着陸帯に描いています。
これは一分一秒を争う重篤な傷病者を乗せたパイロットが目的の病院を発見しやすくするための措置なのです。特に大地震などの災害時には、防災ヘリやドクターヘリなどが被災地域の外から支援にやってきます。「病院ヘリポートマーク」は、彼らが上空から「あそこが病院だ」とすぐに分かるようにするためのマークなのです。
ところが我が国の正式なヘリポートにはそこが病院であっても「病院ヘリポートマーク」を描けないのです。「運輸省」が許さないのです。「建設省」や「総務省消防庁」も同じです。病院の屋上の緊急離着陸場でも「病院ヘリポートマーク」を描くことは原則できません。おかしな話ですね。
「運輸省」、「建設省」、「総務省消防庁」の担当者一人ひとりは現状の矛盾を知っているのですが、「はい、確かにおっしゃる通りですが、私が個人的に許可を出すことはできないのです」と答えるだけです。
法律を変える必要があるわけではなく、自分たちが作った規則を自分たちで変えれば済むことなのですが、残念ながら我が国の役所の方々にとって「病院ヘリポートマーク」は描く必要もない些細なことなのでしょう。
注:ヘリポートに関わる行政の動きをわかりやすく説明することと、縦割り行政に対する問題意識から、敢えて「運輸省」、「建設省」と旧名称を使用しています。 現在の部署に言い換えた場合、「運輸省」は「国土交通省航空局」、「建設省」は「国土交通省住宅局」となります。