エアロファシリティー株式会社

コラム

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「新・ヘリポートの造り方」

2025.04.23

「残念なヘリポート」が出来上がってしまう理由 その1


「失敗した」と知られたくない関係者

こんなことがありました。ある市立病院が移転することになり、私に航空コンサルタントの依頼がありました。私は現地まで何度か足を運び、いろいろな注意点をまとめました。進入方向や飛行ルートをはじめ患者搬送動線など、航空コンサルティング業務の全てを終え資料をまとめました。もちろん有料です。私の作ったコンサルティング資料を手にして担当者は大変感謝してくれました。「設計の段階になったらまた改めて相談しますね」と彼は言いました。

 

彼が暗い声で電話してきたのはそれから1年くらい経った頃だったでしょうか。「私は『専門のエアロファシリティーさんに相談して進めてください』と言って木下さんが作ってくれたコンサル資料も渡したのですが、設計会社は『うちはヘリポートを造った経験があるから大丈夫』と言って聞かないのです。私は公務員ですし、特定の会社を強く推すこともできません。ですが本当に大丈夫なのか少し心配です」と言うのです。結局その設計会社から当社に問い合わせはありませんでした。結果、大変質の低いヘリポート(場外離着陸場)ができてしまいました。私は「残念なヘリポートの典型」と呼んでいます。

 

供用開始して3年経ったころ、そのヘリポートを見にいきました。コンクリートの不陸やクラック、塗装の剥がれなど残念なところばかりがとても目につきます。実は、その市立病院とほぼ同じ時期に近隣の私立病院でもヘリポート工事がありました。こちらは私のアドバイスを全面的に受け入れてくれました。同じ地域で同じ時期に造られた2つのヘリポート。市立病院と私立病院。利用頻度も同じで3年しか経過していないのにもかかわらず天と地ほどの差がありました。

 

施工時期や利用頻度は同じだが、3年後にはこれほどの差が(コンクリート床版㊧とアルミデッキ㊨)

 

「残念なヘリポートの典型」を造ってしまったその市立病院に行って「大変失礼ですが、これは残念なヘリポートの典型と言うしかないですね」と私が伝えると担当者は「ええ、恥ずかしながら私もそのように理解しています。でも木下さん、そんなことはよそでは言わないでくださいね。私も公務員ですから……」などと言うのです。

我が国には「残念なヘリポート」「危険なヘリポート」がいくつもありますが、それを指摘されることを担当者は嫌がります。そして、そうしたヘリポートを持つ病院は外部の方がヘリポート視察に訪れることを嫌がります。「ダメなヘリポート」であっても「あそこはダメですよ」とは言われたくないのです。

「土木」も「建築」も知らない「航空コンサルタント」

「ヘリポートコンサルタント」「航空コンサルタント」と名乗る方は国内にも結構な数がいます。彼らの多くは「ヘリポートの申請業務」「飛行場外離着陸許可申請業務」などはできますが、構造力学や材料力学に関する知識はありません。「土木」も「建築」も知らなくても「航空コンサルタント」は名乗ることができるのです。ですからヘリポートに関する知識が深くない設計会社にまかせると、ときどきとんでもない着陸帯ができてしまうのです。

 

ある病院屋上の「非公共用ヘリポート」について相談がありました。「うちの屋上ヘリポートは鉄板で造ったのだけど、夏場は鉄板が膨張してポテトチップ状になりヘリコプターが降りられない。なんとかしてもらえないか」と言うのです。さすがに「造り替えるしかありません」とは答えられず、お断りしました。

 

「アルミヘリポートは最適だけど鉄板ヘリポートは造ってはダメですよ」と私は20年前から再三言ってきました。しかし、建築も土木も知らない航空コンサルタントにまかせるとこのような失敗が起こることがあるのです。申請業務はできても正確な知識を持って「このように造るべきです」と提案できない「航空コンサルタント」が多いということを知ってください。

 

鉄板のヘリポートは熱によりポテトチップ状になる

おカネが欲しいだけの「航空コンサルタント」

この本の中で私は第1章から繰り返し「病院や都道府県庁、市町村役場、消防署のように、万一の火災の時以外の利用も考えているのなら『緊急離着陸場』ではなく『ヘリポート』の構造で造るべき」と言ってきました。「『ヘリポート』を造るべき」ではなく「『ヘリポート』の構造で造るべき」と書いた理由もすでに説明しました。利用目的が限られるのであれば無理に「非公共用ヘリポート」にしなくても良いと考えます。実際、我が国の病院ヘリポートのほとんどが「ヘリポート」ではなく「飛行場外離着陸場」なのですから。

 

しかしながら「航空コンサルタント」の中には「『非公共用ヘリポート』にしなければ安全ではありません」などと誤った情報を吹きこみ、高額な「航空コンサルティング料金」を取っているところもあります。まずは発注担当者が十分に理解することが必要です。

 

「新・ヘリポートの造り方」

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