コラム
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「新・ヘリポートの造り方」
2025.04.11
本当にあった失敗ヘリポートの実例 その3
今回も、前回に引き続き国内で実際にあった残念なヘリポートの事例を紹介していきます。
行き当たりばったりの計画で給油管に結露
H病院はドクターヘリの基地病院です。「屋上の着陸帯(場外離着陸場)へドクターヘリが帰還してすぐに燃料を入れたい」という要望があり、燃料給油施設を設置することになりました。当初は私に相談があったのですが、その病院を施工した大手ゼネコンの担当者が「コンサルタントは不要です」と病院に告げて独自に給油施設を設置したのです。
できあがった給油施設を見せてもらいました。残念すぎて驚きました。ある学会でその病院のフライトドクターが「こんな立派な給油施設ができました。工事金額は○○○円でした」と胸を張って紹介しているのを聞いて二度ビックリです。当社が施工する2倍以上 、いや3倍近い金額だったのです。工事金額が高いだけでなく、もっともっと残念なことがありました。
航空燃料の給油装置は自動車のガソリンなどの装置と違い、航空燃料専用の仕様が決められているのですが、その着陸帯の給油装置は通常のガソリンスタンドの給油装置を転用したものだったのです。ガソリンスタンドの給油装置で航空燃料の給油を続ければいろいろな箇所が劣化します。「航空燃料には航空燃料専用の給油装置」ということをその大手ゼネコンの担当者は知らなかったようです。
さらに驚いたのが給油配管内で結露が生じるというお粗末です。その燃料給油施設は地下に貯めた航空燃料をポンプでくみ上げ屋上着陸帯脇の払出しユニットからヘリコプターへ給油するというものでした。本来ならタンクローリー車が地下タンク脇に停まりタンクへ航空燃料を注入するのですが、地下タンクの脇に十分なタンクローリーエリアがないために地上を100m以上横樋の中を流すという仕組みなのです。「アホかいな!」私は驚きました。
正しい給油施設
水が混入する危険な給油施設
縦樋の中は常に燃料で満たされていますが、100mの横樋には普段は空気だけしかありません。これでは寒暖の差によって管内に結露が生じます。素人が付け焼刃の知識で重要なことにあたると3倍もの価格で粗末なものが造られてしまうという例です。
着陸帯に水溜まり。凍ってしまってスリップ
I病院はドクターヘリの基地病院です。屋上のコンクリート床の着陸帯脇には格納庫も備えています。当社はその着陸帯の設計にも施工にも絡んでいませんでしたが、私は工事完了直後に視察訪問しました。「工事完了直後というのにこんなに凹凸が多いのか?」と呆れたことを覚えています。着陸帯の表面に不陸が目立つのです。「これでは雨が降ったら水溜まりができてしまうのでは?」と思いましたが指摘することは控えました。
それから半年も経たない頃、運航会社から連絡がありました。着陸帯の水溜まりが凍ってしまい、格納庫から機体を出すときに牽引車がスリップしてしまった、と言うのです。「危うく事故になるところでした」と怒っていました。
I病院以外にも水溜まりが凍った着陸帯で看護師がすべって打撲したとか、パイロットがすべって骨折したなどといった事例が報告されています。着陸帯には「水が溜まらないようにすること」と「 滑り止め塗装を施すこと」はヘリポート工事においてイロハのイであると覚えておいてください。