コラム
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基礎知識
空飛ぶクルマと屋上Vポート
2022.03.02
空飛ぶクルマと 屋上 Vポート「空飛ぶクルマ」磁界の歪みは思わぬ事故に繋がる
屋上ヘリポートに着陸する際にヘリコプターの計器が狂うという現象が運航者で問題となっていることを受け、当社では屋上ヘリポートの磁界の乱れを調査しています。そこでわかってきたことは、アルミデッキのヘリポートでは磁界に乱れはほとんどないのですが、コンクリート床では大きく乱れることがあるということです(磁界調査レポート結果参照)。当初、病院の屋上ヘリポートについてはMRIといった病院内の検査機器が影響しているのかとも思いましたが、どうもそうではないようです。
特にコンクリート床版を敷き並べた着陸帯では乱れが大きい傾向が見られ、真北方向が90度もずれているヘリポートもあり、30度程度の乱れはコンクリートヘリポートでは珍しくありません。
ビル屋上のコンクリート製ヘリポートでは磁界が大きく乱れている場所が多いのです。ヘリコプターには磁気に影響される計器が多く使われているため磁界が乱れていると事故に繋がる恐れもあります。大変危険です。
何が磁界を乱しているのか断言できませんが、現時点で私はコンクリート床版の中の鉄筋を疑っています(鉄筋の磁化については「新・ヘリポートの造り方」を参照)。少なくとも当社が日本中の屋上ヘリポート10カ所以上を調べた結果ではアルミ床のヘリポートでは磁界の乱れがほとんどなく、コンクリート床では大きく乱れているところが目立ちました。
自動操縦の「空飛ぶクルマ」は理論上はヒューマンエラーがないので、人間が操縦するヘリコプターより安全ということを以前述べました。それは確かなのですが、磁界の乱れが「空飛ぶクルマ」の自動操縦に対して影響を与えるとしたら大変なことです。「空飛ぶクルマ」が磁気に対してどの程度繊細な乗り物なのか、私は正確な知識を持ち合わせていません。ただ、言えることは、磁界の乱れはマイナスに働くことはあってもプラスに作用するはずがないということです。「Vポート」の着陸帯やエプロンの床材にPC床版や鉄筋コンクリートを使用するのであれば、建築前に磁気を帯びていない建材かどうか入念なチェックを行った上で床面を形成すべきでしょう。そういった意味からも私はアルミデッキの利用をお薦めしています。
(「Vポート」Vertiport の略称、その他の呼称はバーティポート、バーチポート、ヴァーティポート、ヴァーチポートなど)